Mar/2006
私が私に近づくプロセス。
私が私の話を聞く。
小さい頃・・・夜寝ることが怖かった。
母は隣に寝ていたのに・・・決して手をつないでくれなかった。
私は,自分でなんとかしなくてならず・・・途方に暮れた。
刺激の強い話を作って・・・乗り切った。
そこに快楽を見いだして・・・乗り切った。
本当は・・・そんなこと,したくなかった。
それなのに・・・その時には,助けも,救いもなく・・・。
そうせざるを得なかった。
痛ましい乗り切り・・・。
痛くて痛くて痛い記憶。
私が私を抱きしめる。
“もう、そんなことしなくていい”
“一人にして,ごめん”
“さびしがらせて、ごめん”
“あなたの寂しさをわかってあげられなくて,ごめん”
“こわかったね。本当に怖かったね”
“もう,大丈夫だよ”
そんな風に・・・私が私を抱きしめる。
私が私の話を聞く。
春になると,桜のお花一つ一つにお花の精がはいっていって、つぼみがだんだんふくらむ話。
沈丁花の香りのリボンがそのとき住んでいた団地中に広がる話。
香りをかいだみんなが幸せになる話。
猫柳の銀色の毛が,いつか本当の猫の毛になる話。
“どんな猫?銀色の毛の猫?”
“片一方の目が金目、もう一方の目が銀目の不思議な猫なの”
ふわっと抱くと、猫は風に乗って、次の春を迎えに行く。
つつじの花の蜜は特別に甘くて、蜜蜂も集めにくるけど、こびとさんもバケツを持ってみんなで蜜を集める話。
“まさこちゃん。どこでそんな話を聞いたの?”
“どこでもないの、いま出てきたの”
そんな風に,他愛もない話ができたら,母に聞いてもらえたら,どんなに夜が楽しかったことか。
おだやかで,なごやかで,他愛もなく,かわいらしい。
怖さも,暴力も,冒涜も,ない,夜。
私がずっと望んでいたこと。
え?そうなの。
しらなかった。
そんなことを望んでいたなんて。
そんなこと,お話ししたかったなんて。
ぜんぜん。
知らなかった。
私自身が知らなかった,私の望み。
何十年も,知ることがなかった望み。
遠くから見ると,ポップコーンのように見える梅の花。
バターの代わりにハーシーのキャラメルソースをかけられて、おいしくなっちゃう話。
次から次へとあらわれる、他愛もない,かわいらしいお話。
“まさこちゃん、いつそんなお話作ったの?”
“今,作ったの”
ただ、怖がっている子供の手をつなぐだけで。
その子の小さな望みを叶えるだけで。
いくらでも紡がれる幸せの物語。
どうぞ、あなたにやさしくして。
あなたの心の中にいる子供に。
現実に,周りにいる子供に。
隣りにいる子供に。
幸せが紡がれる。
満ちてゆく。
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